真犯人はこの列車のなかにいる
豪華列車で起きた連続殺人。容疑者は乗客全員。『ぼくの家族はみんな誰かを殺してる』の著者最新刊。伏線だらけの謎解きミステリー!
訳者:富永和子
ぼくはアーネスト・カニンガム。まだ駆け出しのミステリー作家だが、きたる推理作家協会主催の50周年イベントになぜか招待された。豪華列車でいく3泊4日の旅には錚々たる作家たちが招かれていて、ぼくは肩身の狭い思いだったが、そのうちの一人が旅の最中、殺害されてしまう。作家陣はもちろん、一般客も誰もが怪しく、何やら秘密を抱えていそうななか、やがて次なる殺人が起こり……。
型破りで、驚くほどの独創性。ひねりに満ちた伏線の数々がこれでもかと張り巡らされている。スティーヴンソンは黄金期のミステリーを鮮やかに蘇らせると同時に、このジャンルのルールや伝統に深い愛情を示している。風刺とスリル、生き生きとした人物描写が織りなす調和はあらゆる期待を裏切らない。読む喜びをもたらしてくれる傑作。——Crime Time
『オリエント急行殺人事件』に見事なユーモアをくわえた傑作。前作“Everyone in My Family Has Killed Someone”を超える完成度の高さ。——The Times / Crime Book of the Month
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推理小説を書くルールは簡単だ。超自然現象はなし、思いがけない双子の登場はなし、犯人は物語の前半に登場させなくてはならない。
また、犯人は物語の筋に影響を与える人物でなければならない。これは重要な点だ。「犯人は執事でした」でまかりとおる日々は過去のもの。フェアな小説の犯人にはちゃんと名前がある。しかも、その名前は頻繁に登場しなくてはならない。その点を証明するため、本書には、あらゆる形を含めて、犯人の名前はここから135回出てくることを前もって知らせておこう。
読者諸君はすでに気づいているかもしれないが、ぼくはこの種の小説で活躍する探偵もしくは刑事よりも少々言葉数が多い。だが、それはぼくがきみたち読者に何ひとつ隠さずに告げるためである。なんと言っても、本書はフェアな推理小説なのだから。(本文より抜粋)