更新日 2015年12月11日

一匹の猫で人生が変わるとしたら―――? 感動必至の猫小説!

「ネコノミクス」という言葉が新聞に踊るほど、空前の猫ブームが続いている。「ザラザラの舌で顔を舐められるのが幸せ」「家に帰ってきたときにたまにしか出迎えてくれない”ツンデレ”なところが、愛らしい」…。ああ、猫はどうしてこんなにも私たちの心を惹き付けるのだろう。猫には人を骨抜きにする能力が生まれつき備わっているに違いない!

 レイチェル・ウェルズ著『通い猫アルフィーの奇跡』(中西和美:訳/ハーパーコリンズ・ジャパン)は、そんな猫好きにはたまらない作品だ。猫視点で書かれたこの本は、猫の本当の気持ちが分かる現代版『吾輩は猫である』!? 猫の愛らしい描写やその思いが描かれており、あまりの可愛らしさ、愛おしさに悶絶する。ページを開けば開くほどにますます猫が好きになる自分に気が付くだろう。

 主人公は、4歳の灰色猫・アルフィー。やさしい老婦人と幸せに暮らしていたアルフィーは、飼い主の死をきっかけにひとりぼっちになってしまう。帰る家を失い、新しい家を求めてさまよい歩くことになった彼は、孤独や空腹の日々の果てに、複数の家を行き来する「通い猫」になろうと決意する。悲しみに暮れている人間たちのそばにそっと寄り添い、ソファーに座る人間の膝に小さな頭を乗っけてみたり、大切なしっぽをこちらに向けて、励まそうとしてきたり…。人間たちを元気づけようと、時には、わざとカーテンの後ろに隠れてみたり、わざと窓枠から落ちてみたりする。エサをあげれば、体をこすりつけて感謝を伝えてくるし、機嫌がよい時は思いっきり喉を鳴らす。時にめいいっぱい人間に甘え、時に人間の行動に拗ねて冷たく接するアルフィーのツンデレさに読者はもうメロメロになってしまう。幼い頃から猫を飼っていたという作者・レイチェル氏の観察眼はあっぱれ。物語の人間たちがアルフィーの存在によって悲しみから立ち直っていくのと同時に、本を読む私たちまで心が癒されていくような気がする。「人間は猫を自分勝手でわがままだと非難するけれど、事実と程遠いことが多い。ぼくは助けを求めている人の力になりたいタイプの猫だ」。アルフィー自身がそう語る通り、猫は実はとても優しく、温かい存在なのかもしれない。

 アルフィーがいろんな家に通って、いろんな人を幸せにしていくのは、彼が「浮気者」だからではない。彼が幸せに生きるために選択した方法なのだ。物語の中で彼は、語る。「一途な飼い主を一途に慕う猫になりたいのはやまやまだけど、それではあまりに危なっかしい。二度とあんな思いはしたくない」。老婦人を失った彼は、深く傷ついている。「ペットロス」ならぬ「飼い主ロス」に陥っていた彼は、だからこそ、いろんな家に通うことで、周りを幸せにすることで、自分の居場所を見つけようとするのだ。「ぼくがみんなの支えを必要としているように、みんなの愛情と助けを必要としている」。アルフィー自身も悲しみを知っているからこそ、人間たちを癒すことができるのだろう。

 アルフィーが起こす奇跡に思わず胸が熱くなる。猫好きもそうでもない人も、癒しが欲しい人はぜひとも手にとるべき1冊だ。

文=アサトーミナミ

一匹の猫で人生が変わるなんてことがあるのでしょうか?本書には、この疑問への答えが書かれています。
――翻訳家・中西和美(本書あとがきより引用)

通い猫アルフィーの奇跡 (ハーパーBOOKS)

レイチェル・ウェルズ
ハーパーコリンズ・ジャパン
2015-9-22

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